法政大学大学院経営学研究科 法政ビジネススクール

専攻概要

学んで変わる・学んで変える


法政大学大学院
経営学研究科長
西川 真規子

ビジネススクールといえば、MBA取得を目指す人のための教育機関との認識をお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際、法政大学大学院経営学研究科、法政ビジネススクールは、1992年の設立当初からこれまでに1000名近くのMBAホルダーを輩出してきました。そして、これらの卒業生は経済界に限らず行政、医療、教育機関など多方面で活躍されています。

ところで、私が法政ビジネススクールで教鞭をとり始めた今から20年ほど前に、MBA教育の本場アメリカで興味深いタイトルの本-Managers not MBAs-が出版されました(Mintzberg, 2004)。著者は異彩の経営学者ミンツバーグで、この本を通じて従来のマネジメント教育に警笛を鳴らし、ビジネススクールが本来目指すべき方向性を示しました。

この本でミンツバーグは、経営とは、洞察をもたらすアートと、分析に必要なサイエンス、そして経験に基づくクラフトの3つをうまくブレンドした実践である、と述べています。アートは具体的な事象を題材としつつも、帰納法を用いて新しいビジョンを創り出します。サイエンスは体系的分析や評価を通じて、一般(抽象)概念の実践への拡張を目指します。そして、クラフトは具体と抽象の間を行き来しつつ、行為や経験を通じて学びをもたらします。サイエンス重視で分析を重んじるアカデミックな経営教育や、戦略重視で経営のプロ養成を目指す実用的なビジネススクールがひしめく中、ミンツバーグのアート、サイエンス、クラフトを柔軟にバランスよく取り入れようとする統合的なアプローチは、当時に限らず現代にこそ輝きを増しているように思われます。

当研究科では、統合的にマネジメントを学ぶ場が提供されています。社会人を対象とする夜間の修士課程は、高度職業人の養成を目指し設立した1992年当初から、長年にわたる教員と院生とのやり取りを通じて効果的な教育方法を模索し続け、学びを促進するための経験知を積み上げつつ現在に至っています。研究の面白さに目覚め、働きながら博士号取得を目指す院生も多数所属しています。博士課程での研究は孤独な作業となりがちですが、当研究科では正・副教官の複数指導体制の下、研究科全体での研究発表会が毎年2回開催されるなど、研究促進のための支援も整っています。全日制の昼間修士課程では、設立当初から研究者養成を主眼とし、今では多くの留学生を受け入れ、経営学の専門知識や学術的アプローチへの理解を深める場となっています。

当研究科には学部で経営学以外を専攻していた院生も少なからず所属しています。教員はその多岐にわたる専門領域と学部教育での経験を活かした丁寧な少人数制の講義を行い、院生が専門領域での理論や概念を深く学ぶことを促進しています。このような学びは、現場での体験と結びつくことで一層効果を増しますが、現場との統合的視点を得る上で、経営の最前線に立つゲストスピーカーを招いたワークショップでの活発な議論は大変好評です。さらに個別演習では、自律的学習を促進する対話型の英国式チュートリアルシステムを取り入れ、院生全員が修士論文やリサーチペーパーの完成に向け研究に邁進しています。

皆さんの中には、職場での実践に直結するテクニックを早く習得したいので、悠長に研究に取り組んでいる暇などないと思っている方はおられませんか。確かに、社会人の院生は多忙を極めます。しかし、研究こそが、理論と現実を結びつけ、これまでとは異なる現実の記述(意味付け)を可能とし、新たな視座を得る上で最も有効だと言えます。最初は皆これまでの見方に囚われ、研究テーマや研究のための問いの立て方に四苦八苦します。しかし、自らも研究者である教員との対話を通じて、探求するに値する問いの立て方(アート)やその問いに対する結論の見出し方(サイエンス)について学習が進みます。このような研究アプローチの修得は、日々の実践を分析的視点で捉え(サイエンス)、異なる意味を見出し(アート)、改善をもたらすこと(クラフト)に大いに役立つはずです。

組織学習を専門とするセンゲはその著書で、「変化こそ学習、学習こそ変化」と喝破しました(Senge, 2006, The Fifth Discipline: The Art & Practice of the Learning Organization)。現在皆さんが経験している目まぐるしい環境変化への適応も、学習を通じて自らが変わることで可能となり、自らが学習を通じて変わり、周りに有効に働きかけることができるようになれば周りも変わり、その結果、共により良い環境を創り出していくことも可能となるのではないでしょうか。当研究科では、アート、サイエンス、クラフト全てを刺激する学びの場が提供されています。このような学びの場に参加したい方を教員一同歓迎いたします。

法政大学大学院経営学研究科
研究科長 西川真規子

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